まち日記(旅と仕事と日々ごはん_時々走り)

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郄村薫『半眼訥訥』(文春文庫)


郄村薫の超ファンとして、エッセイ集は珍しいなぁと期待して読んだが、どちらかというとツラクなるようなものが多かった。一般的な庶民を題材に、個をきっちりと描くスタイルが、小説では輝きを見せるが、短いエッセイとなると、彼女は突如迷走という感じになるみたいだ。「〜というわけではない」「〜することを目的としてはいない」といったような、語末にならないと肯定なのか否定なのかわからない文は、はらはらサスペンスとスリルの中では生きても、エッセイではちょっとツライ。ロジックの組み立てはどうもあまり向いていないのかなぁと、そう思う。


ハードタッチの文体が、小説ではぐいぐいと心を惹きつけるけれど、エッセイでは、ハードタッチに徹することもできず、本来の人柄が少しだけ顔を出してしまうということなんだろうか、どっちつかずなふわふわ感があって、これまた読んでいてつらくなる。何につけ、自分を出し切れない姿を見るのはつらいもんだ。だから、それほど自分を出さずにすみ、個をきっちり描くという分野に入る、「仕事の風景」なんていうのは、やっぱりこれだぁと思ってしまう私の好みの部分だったけど。