まち日記(旅と仕事と日々ごはん_時々走り)

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言わずもがなの通訳ガイドの収入レベル

難関国家資格「通訳ガイド」の意外な低収入実態。就業者の6割強が年収100万円未満

メディアサボールの記事。
朝鮮語で通訳ガイド資格を取ったのはもうかれこれ10年以上前のこと。一度もその資格で仕事をしたこともない。最近ではもう、履歴書に書くことすらない。というか、数年前まで講師をしていたときには、韓国人留学生を対象にした通訳ガイド試験対策の授業を担当していたので、その仕事をもらうときの決め手にはなったが、私の後任はこの資格は持っていない。はず。
彼らにとっては、その一般教養というやつが本当に難関だった。相撲の決まり手と柔道の決まり手の中から、1つだけ相撲の決まり手でないものを選ぶ、とか、面白い問題がイッパイあったよ。

この筆者の方も書かれているが、中国語、韓国語の旅行ガイド通訳は、コーディネーターとかいう名前でもって、日本人ではなく、その地出身の人が使われることが多かったのは、すでに私が資格を取ったときからそうだった。某旅行会社に売り込みというか紹介を受けて話を聞きに行ったが、「仕事は、まずありませんね。日本人の通訳ガイドは発音も悪くてなに言ってるかわからないという客のクレームも多くて使えないから」というのが現場の評価だった。

ガイドで食っていこうとしていたわけじゃないが、それにしても仕事がないのか...やっぱりなぁ、という確認にはなった。その当時は朝鮮語の能力を測る試験がこれ以外になかったから受けたわけなので、仕事がないだろうというのは合格後の、研修とやらで先輩ガイドが収入のことに関してまともに回答しないことから、すでにうすうすわかっていたが、ああ、そういうことか、と実感したのは旅行会社に行ったときだ。

ダメだとか違法だとか無資格だとか言ったって流れは止まらない。日本人ガイドが、中国人、韓国人の旅行者をきちんとガイドできる語学力もなく、日本の文化を説明する力もなく、彼らを楽しませることもできないなら、国家試験だろうがなんだろうが、お客さんはつかない。あ、そもそも日本の文化を知りたいような観光客はアジア地域ではごくごく少ないというのもまぁ、ある。

この資格は、すでに資格産業と、主催者の職を守るためだけにしかない状態だ。レベルにしたって、正直、弁護士だの会計士だのと並べられたら彼らに申し訳ない。そもそも、中国語や朝鮮語の通訳ガイド試験を受けに来る人たちの顔ぶれが、すでに大部分中国人や韓国人留学生だという実態を、この方はご存知だろうか。主催者は、一般常識試験を一次試験の段階に前倒すなど、それなりの「排除」対策をしているようだが。
だいたい、私だって、彼ら留学生から、何度となく「ガイド資格で食っていけますか」と聞かれたものだ。そういう点は、日本人の、「涙ながらに窮状を訴えた」ガイドよりは、よっぽど率直だし、資格取得前の目はしが利いている。私は、「他に目安がないなら、これを取っておくべきだ」といつも回答していたし、正直、彼らがもし日本企業に就職することを目指しているとしたら、ガイド試験を取得していることは、「真面目なんだな」という、大変に大きなポイントとなるだろうということは認める。なにしろ、中国人や韓国人を雇い入れるときに考えることと言ったら、日本人並みに気真面目かどうか、がまず第一だろうから。

追記:韓国人留学生に以前聞いたところによると、韓国の通訳ガイド試験にあたるものは、文化云々はともかく、旅行に関連する法規の試験が義務付けられているとのこと。旅行業務取扱管理者試験に相当するような法律の試験なんだと思うが、そこまでやるなら、通訳はいまひとつでも、ガイドとして立ち働いてもらえるという意味で、旅行会社側も、もう少しガイドに支払う報酬もアップしてくれるかもしれない。留学生をヤミで使ったりもしないかもしれない。

話はまったく変わるが、某独立行政法人から、通訳者派遣の見積依頼が来た。私のいる会社から出せる通訳者は、1日7〜8万円を取るレベルの通訳者(つまり売値はもう少し高い)だけだが、某独立行政法人の要件といえば、「最低3社から見積もりを取って最も安いところに頼む」とのこと。これじゃあガイドも通訳もへったくれもない。最も安いところがいいなら、歌舞伎町なり、大学院なりでうろうろしている留学生崩れの連中に声をかければいいことだ。1日2〜3万円できっとやってくれるよ。
業界団体というものがもしあるなら、こういうなかば公的な引き合いの際の要件に、通訳ガイド資格を持つ者とかいう項目を加えてもらえるように働きかけるとか、それくらいのことはやったほうがいい。ただ、上にも述べたとおり、客にとっては、通訳ガイドの免許は最低限の能力の保障にしかならない。通訳としてはまだまだ本格的には使えないレベルだということをわかった上で、最低限上のようなニーズの客先での仕事も通訳ガイドさんとやらに回るようにしない限り、本当に、ただの死んだ資格のまま、誰からも見向きもされなくなるだろう。